動物虐待と体罰

 2012-08-17
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朝日新聞社が2010年に行った意識調査では、
58%の人が「親による子供への体罰は必要」と答えたそうです。
まぁ、昔は約75%の日本人が
「体罰は子供のしつけに必要」と答えており、
1998年に中高大学生を対象にした調査では、約半数の子供たちが
「体罰を受けてきた、あるいは現在、受けている」と答えていたそうですから、
少しは良くなったのかもしれません?

ちなみに「法務総合研究所」が
全国の少年院在籍者を対象に調査した結果をまとめた
「児童虐待に関する研究」(2001年3月発行)によると、
全在院者のの53%の2354人(男子2125人女子229人)が
アンケートに答え、男子の約70%、女子の約80%が
家族からの身体的暴力または虐待を受けていたと答えたそうです。
さらに虐待を受けた後の行動を聞いた質問では、
男子も女子も「家出した」「酒を飲んだ・薬物を使用した」
「何もしたくなくなった」「八つ当たりした、いやがらせをした」
「家に閉じこもった」「趣味・スポーツをした」
「自分も他の人に同じような事をした」と答えており、
世界的にも体罰が子供の人格に多大な影響を与えるともに、
体罰による死など、重大な事故につながる危険性があると訴えられているにも関わらず、
いまだに多くの国で体罰は必要とされているのが現実のようです。

しかし、体罰を受けた子供達と話をすると、
多くが「自分が悪かったから、仕方がない」と答えるそうです。
誰が悪かったかを尋ねているのではなく、
その時のあなたの気持ちがどうだったか?を尋ねると、
しばらく考えてから、
「すごく怖かった。その後は、やたらくやしくなった」と答える事が多かったそうです。
体罰を受けた子供達の答えに共通している点は、
自分の感情を置き去りにしている事が多い事・・
これは、体罰が自分を律する力や善悪を判断させる力を養うものではなく、
単に恐怖と不安で思考を麻痺させ、行動を抑制するだけだからかもしれません?

これは犬にも同じ事が言えると思います。
犬の行動原理は人間と比べると単純であり、
その多くは要求である事が多いです。
しかし、その伝え方を知らないので、
吠える、噛む、家具を破壊する、排泄を失敗する・・
などの方法をとってしまっているに過ぎません。
人間なら会話で気持ちを聞く・・
コミュニケーションを取る事もできますが、
飼い主さんが犬の気持ちを読み取る方法を知らない・・
正しい表現の教え方が分からないので、
暴力で黙らせる、
行動を止めさせると言う発想になる事が多いのだと思います。
そこには「体罰は良くないが、時には必要だ」
と言う気持ちが少なからずあるからかもしれません?
しかし、犬も単に恐怖と不安で思考や行動が抑制されているだけなので、
自分の行動を制御したり、知識が身について判断力が上がったわけではありません。
だから、叱られてばかりの犬は何もしない犬になるか、
感情の起伏が激しくなって情動的に行動するか、、
自分の身を守る為に逆に攻撃的になるのだと思います。

かって、奴隷制が健在だった社会では、
奴隷には人権が認められておらず、
言う事を聞かないと言われては殴られ、
作業を怠ければ鞭を打たれると言う罰を与えられていたそうです。
それと犬への体罰とどれ程の差があるでしょう?
また、無知で社会のなんたるかを知らない奴隷には、
身体で教え込まなければ学ぶことはできないと言う論理・・
怠け者の奴隷たちには、体罰であたらなければ
つけあがって手がつけられなくなる、と言う論理と、
犬は力で・・身体で教え込まなければわからないと言う、
体罰正当化の根拠とは重なるような気がします。

また、昔の絵本に出てきたサーカスの動物達は、
鞭で叩かれて言う事を聞かされている事が多かったです。
それとフルチョークで犬を吊り上げて
言う事を聞かせる行為と何が違うのでしょう?
その頃に酷い大人だ・・
と思っていた大人になってはいないでしょうか?

まぁ、体罰を受けたとする回答者の内訳が
親から過激な虐待を受けた者を含んでおり、
あくまで躾として軽度の体罰を受けたとするものは、
体罰を一度も受けなかったとするものよりも犯罪歴が低く、
学歴、収入が高いとの結果も出ている
と言う説もありますし、
「叱ってはいけない」と言うのも違うと思いますが、
体罰は即効性があり、効果が高いので、
他のしつけの方法が分からなくなる・・
他のしつけ法に目が行かなくなる事は多いみたいです。

体罰は恐れで犬の行動を押さえ込む為、
体罰をする人間の前では犬の行動は
一見、矯正さえたかに見える事は多いです。
こうして、体罰の表面的な効果に味をしめた飼い主さんやトレーナーは、
他のしつけの方法に目が行かなくなってしまう事は多いそうです・・
ですから、ちょっとした犬の失敗や行動に対し、
常に体罰と言う方法をとる事になり、
段々と体罰の厳しさがエスカレートする傾向が強いそうです。

それから、根本的な問題として、
犬に手をあげたくなるのは、
飼い主さん自身のストレス度が高いからではないでしょうか?
「旦那さんや義父、義母、近所から苦情や苦言を言われる・・」
「犬友達から馬鹿にされるような発言を受ける・・」
そう言ったものが体罰を行う理由になっている事は多いと思います。
もし、これが山奥でどんなに犬が吠えても誰にも迷惑をかけない・・
誰も何も言わなかったとしても、犬に体罰を行うでしょうか?

そう言う意味では、犬を叩いてしまうのは、
犬の問題と言うよりも飼い主側の問題からかもしれません?

昔と比べると動物の遺棄や虐待に注目が集まるようにはなりましたが、
人間社会における体罰が「仕方がない」と考えられている間は、
減らないし無くならないかもしれません・・
でも、逆に動物への体罰を考える事で
子供や女性と言った弱者に対する暴力を考え直せるとしたら、
「体罰を行わないようにする」と言うルールを
自分で決めてみるのも良いのではないかと思います。

「体罰を行わない・・」そう決めた途端、
どう教えたら良いかが分からなくなる事もあるかもしれません?
それが枷になって犬育てが苦しくなってしまうかもしれませんが、
そう言う時の為に犬育ての知恵やアイディアをみんなで話し合う・・
持ち寄ると言う場や仲間を作るのも良いのではないかと思います。
しつけの本は大勢の人のために書かれたものですから、
個別の問題については各自で対応するしかありませんし、
誰かに教えられた方法をそのまま真似しても
同じ結果にならない事の方が多いです。
でも、そうやって選択肢を沢山、持っていれば、
様々な状況に対応できると思いますし、
そう言う「スキル」を沢山、持っている人が
良いトレーナーさんなのではないかと思います。
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